恒星進化論


HR図

■ヘルツシュプルング・ラッセル図(HR図)

恒星とは、自らが光を発するガス体の天体の総称です。ガス体の天体は、重力に対抗するために、内部が高温・高圧になることが必要です。そのためのエネルギーは、大部分の恒星において、原子核融合です。

ヘルツシュプルング・ラッセル図(HR図)とは、縦軸に絶対等級(明るさ)、横軸にスペクトル型(表面温度)をとった、恒星の分布図のことです。

HR図上で恒星の分布を見ると、大部分の恒星が図の左上(明るく高温)から図の右下(暗く低温)に延びる線上に位置します。この線を主系列、この線上に位置する星を主系列星と呼びます。主系列星は、水素の核融合反応が安定に進行している星です。太陽もこの主系列星に属します。主系列の上方や下方にもいくつかの星が分布します。

主系列の上方に位置する星は、主系列の同じ表面温度の星に比べると明るい星です。これは星自体の直径が大きい、つまり巨星であることを意味します。これらの星の多くは赤色巨星であり、中心核での水素が枯渇して老年期に入った星です。

主系列の下方に位置する星は、主系列の同じ表面温度の星に比べると暗い星です。これは星自体の直径が小さい、つまり矮星であることを意味します。これらの星の多くは白色矮星であり、核融合反応が停止して一生を終えつつある星です。

またHR図の主系列部分を除く中央上方から中央下方の帯状の領域は、脈動変光星の多くが属する領域であるため、不安定帯と呼ばれます。


星の一生

■星の一生

まず、星雲から原始星が誕生します。この段階ではまだ核融合反応は始まっておらず、収縮による重力エネルギーの解放で輝いています。低温で暗いHR図上の最も右下から左上に向かって移動していきます。原始星は、表面温度は低いが直径が主系列星よりも大きいので、絶対等級は明るく、HR図上では主系列の上方、赤色巨星の下部に位置します。

中心核の温度が上昇し、核融合反応が始まると、星は原始星から主系列星となり、その質量に応じた主系列上の位置に移動します。質量が大きい星ほど核融合反応が激しく、表面温度が高く、絶対等級も明るくなるので、主系列の左上の方に位置します。主系列上に位置する時間の長さは、恒星の質量によります。質量が大きい星ほど核融合反応が激しく進行するので、水素の枯渇が早く、主系列上に位置する時間は短くなります。

核融合反応が進み、中心核での水素が枯渇すると、恒星は徐々に膨張していきます。この時に表面温度は低下しますが、絶対等級はあまり変化しないため、HR図上では主系列から外れて右側へ水平に移動していきます。途中で不安定帯を通過するため、この時期には変光星となります。

このようにして最終的に赤色巨星となった後、大質量星は、超新星爆発により一生を終えます。小質量星では、赤色巨星でいる間に外層の大部分を吹き飛ばしてしまい、内部の高温部分が露出するために表面温度は上昇していきますが、星の直径が小さくなるために絶対光度は暗くなり、HR図上を左下へ向かって移動し、白色矮星となります。核融合反応が起こらないため、その後は冷えて暗くなる一方であり、徐々にHR図上を右下へ移動していき、一生を終えます。

画像(ESO著作物)は、太陽と同じ程度の質量を持つ星の生涯過程を描いた説明図です。


原始星の誕生

■原始星の誕生

原始星とは、誕生初期の恒星のことです。暗黒星雲の一部が自己の重力で収縮を始めてから、可視光でも観測できるようになる前の状態までを指します。

暗黒星雲の一部が近くで起こった超新星爆発の衝撃波などを受けて圧縮され、密度の高い部分ができると、この部分は重力が強くなり、周囲の星雲の物質を引き寄せるようになります。するとさらに重力が強くなり、加速度的に密度が高くなっていきます。この際に、重力によるポテンシャルエネルギーが熱に変わるので、温度が上昇していき、熱放射が始まります。これが原始星です。

画像(NASA/ESA著作物)は、ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影された、大マゼラン星雲の星形成領域N11Bです。


主系列星の内部構造

■主系列星

原始星は、徐々に収縮して重力によるポテンシャルエネルギーを熱に変えて、中心の温度を上昇させていきます。中心の絶対温度が1000万度を超えると、水素がヘリウムへと変換される核融合反応が起こり始めます。核融合反応によって発生する大きなエネルギーにより、収縮は押しとどめられて、星は主系列星となります。

太陽質量の0.5倍以下の小質量星では、中心核から表面まで全てが、水素燃料と生成したヘリウムを混合する対流層であり、一様な組成となっています。その理由は、温度が低いため、光子の不透過度が高いためです。

太陽のような中質量星では、中心核の内部で放射によるエネルギー運搬が十分に作用するので、核内の対流はおこりません。対流しない放射層の核が発達し、その上に対流層が載ります。こうした星の表面は、中心核からの核融合生成物を含まず、その星が形成された星雲と同じ組成を保持します。

太陽質量の1.5倍の星では、対流層はほとんど消失し、中心核から表面まで全てが放射層となります。

太陽質量の1.5倍を超える星では、水素をヘリウムに変換する核融合反応は、陽子陽子連鎖反応ではなく、炭素・窒素・酸素を触媒とした水素核融合であるCNOサイクルが主体となります。CNOサイクルは温度に非常に敏感なため、星のエネルギー生成は中心部に集中するようになり、核の領域に対流層が発達します。対流する核の上に、熱的に平衡でほとんど混合が起こらない放射層が載ります。

主系列星では、核融合反応が激しくなると星全体が膨張して温度を下げて核融合反応を弱め、核融合反応が弱くなると星全体が収縮して温度を上げて核融合反応を強めます。このようにして自動的に核融合反応が調節されるので、温度や構造も一定で安定しています。この状態は中心の水素が枯渇してヘリウムの核ができるまで続きます。


赤色巨星となった太陽

■赤色巨星

主系列星の中心の水素が枯渇してヘリウムの核ができると、ヘリウムの核の表面では水素の核融合が進行し、ヘリウムの核の質量は増えていきます。ヘリウムの核は質量が増えるとかえって収縮し、温度が上がります。中心部の温度が上がると、外層部の水素は膨張します。膨張につれて星の表面温度は低下していき、赤色巨星となります。

赤色巨星の外層では、恒星の中心からの距離が遠くて重力が弱いために、徐々にガスが周囲に流出し、恒星は外層を失っていきます。

太陽質量の0.5倍以下の恒星では、ヘリウムの核融合が起こるほど中心核の温度が上昇しないので、そのまま水素を使い切り、核融合反応が起こらなくなったところで一生を終えます。外層を失ったヘリウムの核は、収縮によって白色矮星となり、白色矮星は熱放射により長い時間をかけてゆっくりと冷却していきます。

なお、太陽質量の0.5倍以下の恒星では、その一生は1000億年以上に及びます。これは現在の宇宙の年齢(約137億年)よりも長く、このようにして一生を終えた星は今のところ存在しません。

太陽質量の0.5倍より大きい恒星では、ヘリウムの核の収縮が進行して絶対温度が1億度を超えると、中心でヘリウムから炭素への核融合反応がはじまります。すると、主系列星の時と同じように安定に調節される核融合反応が起こることになるので、星全体が収縮して主系列星に近い状態に戻ります。この時に恒星の外層が不安定な状態となり、星全体が脈動するケフェイド変光星となります。

中心のヘリウムが枯渇すると、水素が枯渇したときと同じように、中心の炭素の核が収縮しはじめ、周辺でヘリウムの核融合反応が起こり始めます。そして再び膨張が始まり、恒星は赤色巨星となります。ある程度よりも膨張が進むと、恒星の外層が不安定な状態となり、星全体が脈動するミラ型変光星となります。ミラ型変光星は、脈動と同時に、外層のガスを周囲に放出していきます。

太陽質量の0.5倍から8倍までの恒星では、炭素の核融合が起こるほどには中心核の温度が上昇しないので、太陽質量の0.5倍以下の恒星と同様に、外層を失った炭素の核が白色矮星となって一生を終えます。周囲に放出されたガスは惑星状星雲として輝きます。


白色矮星

■白色矮星

赤色巨星の外層は星の中心から離れているために重力による束縛が弱く、徐々にガスが星から流出していきます。そのため恒星は外層を失い、中心核が露出します。ここで核融合反応が終了したものが、白色矮星となります。流出したガスは、惑星状星雲として観測されます。

白色矮星は、恒星が進化の終末期にとりうる形態の一つです。質量は太陽と同程度から数分の一程度の大きさがありますが、直径は地球と同程度かやや大きいくらいに縮小しており、非常に高密度の天体です。

画像(NASA/ESA著作物)は、白色矮星として最もよく知られるシリウス伴星(シリウスB)の想像図です。直径は太陽の0.016倍、質量は1.06倍、平均密度は水の40万倍とされます。そこから、表面重力は太陽の約4100倍、地球の約11万6000倍と計算されます。


惑星状星雲

■惑星状星雲

画像(NASA著作物)は、スピッツァー宇宙望遠鏡で撮影された、らせん星雲NGC7293の赤外線映像です。らせん星雲は、みずがめ座にある有名な惑星状星雲です。

惑星状星雲の名は、望遠鏡で観測したときに緑がかった惑星のように見えるところから、ウィリアム・ハーシェルによって名付けられました。太陽質量の0.5倍以上8倍以下の恒星が惑星状星雲になるといわれています。

恒星は、一生の末期になると外層が膨張して赤色巨星となり、外層のガスは徐々に恒星の重力を振り切って周囲に放出されていき、原始惑星状星雲となります。一方、中心核は自分自身の重力で収縮して高温・高密度の白色矮星となります。

白色矮星は紫外線を放射し、この紫外線が赤色巨星であった時に放出したガスに吸収されると、ガスはそのエネルギーによって電離して光を放って輝くようになります。これが惑星状星雲です。


青色巨星

■青色巨星

青色巨星とは、高温のために青く見える大質量の恒星のことです。直径は太陽の5〜10倍程度ですが、明るさは数千〜数万倍に達します。しかし、燃料を激しく燃やしているために寿命は短く、数百万〜数千万年程度とされます。

更に明るいものは青色超巨星と呼ばれ、直径は太陽の数十倍、明るさも二万倍以上に達するものが多くあります。

青色巨星や青色超巨星は、赤色超巨星(質量によってはウォルフ・ライエ星)を経て、最期には超新星となり、中性子星やブラックホールを残すと考えられています。


赤色超巨星の内部構造

■赤色超巨星

太陽質量の8倍以上の恒星では、中心核の絶対温度が6億度を超えると、炭素の核融合反応が起こり、ネオンやマグネシウムを生成します。

太陽質量の8~10倍の恒星では、さらに温度が上昇すると、ネオンやマグネシウムが電子捕獲反応を起こしはじめます。すると、中心核での圧力が一気に下がって重力を支えられなくなり、恒星は一気に収縮し、重力崩壊が起こります。

太陽質量の10倍以上の恒星では、核融合反応がさらに進行します。中心核の絶対温度が15億度を超えると酸素の核融合でケイ素などが生成され、さらに25億度を超えるとケイ素などの核融合で鉄などが生成されます。原子番号が鉄付近の原子核は最も安定な原子核であり、これ以上核融合を起こしません。

鉄の中心核の温度がさらに上昇して100億度を超えると、鉄の原子核がヘリウムに分解されはじめます。この分解は吸熱反応であるので、中心核での圧力が一気に下がって、重力崩壊が起こります。


超新星爆発

■超新星爆発

太陽質量の8倍以上の恒星が重力崩壊する際には、莫大な量の重力によるポテンシャルエネルギーが解放され、恒星全体が吹き飛びます。これが超新星爆発です。

画像(NASA著作物)は、ケプラーの超新星 (SN1604) の超新星残骸です。スピッツァー宇宙望遠鏡、ハッブル宇宙望遠鏡、チャンドラX線天文台による合成画像です。


中性子星

■中性子星

太陽質量の10~20倍程度の恒星では、超新星爆発の後、重力崩壊で押しつぶされた直径10キロメートル程度の中心核が残ります。この中心核は、非常に強い重力のために原子核に電子が吸収され、ほとんどが中性子からなっている中性子星です。直径は10キロメートル程度でも、質量は太陽と同じ程度の非常に高密度の星です。

画像(NASA著作物)は、中性子星の想像図です。


ブラックホール

■ブラックホール

太陽質量の30倍以上の恒星では、超新星爆発の後、中性子星になってもその重力を支えられずに重力崩壊が進行し、極限まで収縮したブラックホールとなります。

画像(NASA著作物)は、ブラックホールの想像図です。


ウォルフ・ライエ星

■ウォルフ・ライエ星(WR星)

主系列にある恒星の中心部の水素がすべてヘリウムに変換され、水素殻燃焼とヘリウム燃焼の段階に入ると、主系列から外れて外層の膨張が始まります。一般には、膨張につれて表面が低温になるため、赤色巨星となります。

しかし、太陽質量の40倍を超えるような大質量星では、恒星風が強いため、膨張の過程で重力による束縛が振り切られ、水素に富んだ外層が吹き飛ばされて失われます。

その結果、高温の内部が露出して、青色巨星となります。これが、ウォルフ・ライエ星です。吹きとばされたガスが、星の周囲に、散光星雲として輝いていることもあります。

ウォルフ・ライエ星は、恒星の一生の末期の姿であり、他の大質量星と同様にやがて超新星爆発を起こすものと考えられています。

画像(ESO著作物)は、ウォルフ・ライエ星WR124と周囲の星雲M1-67です。超大型望遠鏡VLTで得られたデータの処理画像です。


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