サメとエイ


サメ・エイ類の上位分類

■サメ・エイ類の上位分類

サメとエイは共に、脊椎動物亜門・軟骨魚綱・板鰓亜綱に分類されます。

軟骨魚綱(なんこつぎょこう)とは、ギンザメ、サメ、エイの仲間を含む、脊椎動物亜門の下位分類群です。名称の由来は、全身の骨格が軟骨で構成されていることによります。脊椎動物の中では、比較的原始的な分類群です。

板鰓亜綱(ばんさいあこう)とは、サメ・エイ類で構成される、軟骨魚綱の下位分類群です。全世界に九百種以上が存在し、分布域は海洋のほぼ全域、および一部の淡水にまで広がります。いずれも軟骨の骨格をもち、五対から七対の鰓裂(さいれつ)を備えます。

近縁の分類群にギンザメ類を含む全頭亜綱(ぜんとうあこう)がありますが、こちらは鰓裂を一対しか持ちません。


サメ・エイ類の下位分類

■サメとエイの起源

サメの起源は、約四億年前の古生代デボン紀に遡ります。最初のサメは浅い海で進化したといわれています。サメは淡水との親和性が高く、今も淡水湖などで捕獲されることがあります。古生代後期の石炭紀になると、様々なグループが現れました。

しかし、古生代に現れたサメの多くは、古生代末期のペルム紀に絶滅しました。現代型のサメの多くは中生代白亜紀に原型ができあがり、新生代に現代型のサメが世界中の海に放散して種類を増やし、特にメジロザメ類が繁栄したと考えられています。

エイは、中生代ジュラ紀に、サメの一部の系統から底生生活に適応して進化したと考えられています。そのため、カスザメのようにエイ類とほとんど区別がつかないサメや、シノノメサカタザメ(ガンギエイ目)のようなサメと呼ばれるエイも存在します。また、トビエイのように二次的に遊泳生活に戻ったエイもあります。

サメとエイの分類上の主要な区別点は、サメでは鰓裂が体の側面に開くのに対し、エイでは鰓裂が体の下面(腹面)に開くことです。


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■ゾウギンザメ(全頭亜綱・ギンザメ目・ゾウギンザメ科)

全頭亜綱(ぜんとうあこう)は、軟骨魚綱の中で、古くに板鰓亜綱(ばんさいあこう、サメ・エイ類)と分かれてできた分類群です。分岐した年代は定かではありませんが、約四億年前の古生代デボン紀には全頭類の化石が見つかっていることから、それより以前であると考えられています。

板鰓類と全頭類の大きな違いは、鰓(えら)の開口部の形状です。板鰓類が鰓裂(さいれつ)を五対以上持つのに対し、全頭類では鰓を一枚の鰓蓋が覆い、鰓裂は一対となります。このため全頭類の鰓裂は外鰓孔(がいさいこう)と呼ばれます。

全頭類の現生種の成体では鱗は消失し、皮膚は粘膜で覆われるのみですが、絶滅種の多くはサメのような楯鱗(じゅんりん)を有します。

全頭亜綱に含まれる現生の目は、ギンザメ目のみです。そのうち、ゾウギンザメ科は一属三種を含み、すべて南半球に分布しています。全長60~120センチメートルで、鉤状の吻を持ちます。繁殖形態は卵生です。


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■ポートジャクソンネコザメ(板鰓亜綱・ネコザメ目・ネコザメ科)

ポートジャクソンネコザメ(ポートジャクソン猫鮫)は、ネコザメ科では最初に記載された種です。南オーストラリアの沿岸海域にのみ生息し、種名はオーストラリアのポートジャクソン湾に由来します。

最大全長165センチメートル。ネコザメ科に共通した特徴として、背鰭の前棘、眼上の隆起、臀鰭を持つことなどが挙げられます。前歯は単尖頭で棘状、後歯は臼歯状で、ものを噛み砕くのに使われます。体表面は大きな循鱗に覆われ、非常に荒く頑丈です。

底生性で夜行性です。昼間はあまり活発ではなく、岩の隙間などに身を潜めて休んでいます。おもに底生の無脊椎動物を捕食します。特にウニを好み、他に甲殻類、貝類、小さな魚類なども食べます。繁殖形態は卵生です。


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■ジンベエザメ(板鰓亜綱・テンジクザメ目・ジンベエザメ科)

ジンベエザメ(甚平鮫)は、テンジクザメ目ジンベエザメ科に属するサメです。サメおよび軟骨魚類のなかで現生最大であるだけでなく、現生最大の魚として知られます。世界中の熱帯・亜熱帯・温帯の表層海域に広く分布します。

信頼できる固体記録の最大値は全長約13.7メートルとされます。体形は紡錘形で、扁平な形の頭部を持ちます。体の幅は頭部で最も大きく、大きな口の中には、300~350本の細かな歯が列をなしています。皮膚組織は分厚く、その厚みは最大値でおよそ10センチメートルにもなります。

プランクトンのほか、小魚、海藻などを摂食します。海水と一緒にそれらの生物を口腔内に吸い込み、鰓耙(さいは)と呼ばれる毛状の器官で濾し取り、鰓裂から水だけを排出して、残った生物を呑み込みます。

動きは緩慢で、性格はいたっておとなしく、基本的には人にとって危険性の低いサメとされます。

繁殖形態は胎生です。数年に一回の割合でしか出産しない、繁殖力の低い動物であることが知られています。


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■ホホジロザメ(板鰓亜綱・ネズミザメ目・ネズミザメ科)

ホホジロザメ(頬白鮫)は、ネズミザメ目ネズミザメ科に属するサメです。亜熱帯から亜寒帯まで、日本近海を含む世界中の海に広く分布しています。

平均的な全長4.0~4.8メートル、体重680~1100キログラムです。全長8.0メートル、体重3.0トンを超える個体が生息している可能性もあると言われます。体形は、がっしりとした流線紡錘形です。

非常に鋭利な歯は、正三角形で、長さは7.5センチメートルあります。縁はのこぎりのようにギザギザになっており(鋸歯状縁)、皮や筋肉を切断するのに適した形状です。

食性は動物食で、イルカ、オットセイ、アザラシなどの海産哺乳類を好み、魚類や海鳥も捕食します。クジラの死骸を食べることもあります。

人にとって、襲われれば最も危険なサメであり、世界中で死傷事故が発生しています。映画『ジョーズ』のモデルとなって以来、悪名高き人喰いザメというイメージが多くの人に定着しました。

繁殖形態は卵胎生です。子宮の中で卵から孵化した胎仔は、母親の未受精卵を食べて育ちます。


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■ヨシキリザメ(板鰓亜綱・メジロザメ目・メジロザメ科)

ヨシキリザメ(葦切鮫)は、メジロザメ目メジロザメ科に属するサメです。世界中の暖かい海に幅広く生息し、長距離を回遊します。日本に水揚されるサメ類の中では最も多く、肉、鰭、皮、軟骨などが利用されています。

最大で全長4.0メートル、体重200キログラムに達します。体形は細身の流線形です。円錐形の長い吻と、比較的大きい眼を持ちます。両顎歯は異形で、上顎歯は幅広の三角形で鋸歯状縁を備え、下顎歯は単尖頭で細身の三角形です。

比較的小形の硬骨魚類やイカを主要な餌生物とします。他に無脊椎動物、小形のサメ、哺乳類(鯨類)の死骸、まれに海鳥も捕食します。他のメジロザメ類には見られない特徴として、鰓でプランクトンを濾過して食べることもできます。

人や船を襲うこともあり、危険性が高いサメです。繁殖形態は胎盤形成型の胎生で、一度に最大で百尾以上の子どもを産みます。


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■アカシュモクザメ(板鰓亜綱・メジロザメ目・シュモクザメ科)

アカシュモクザメ (赤撞木鮫)は、メジロザメ目シュモクザメ科に属するサメです。世界中の暖かい海の沿岸に生息します。

最大で全長4.3メートル、体重150キログラムに達します。シュモクザメに共通した特徴として、頭部が左右に張り出してその先端に目と鼻孔があり、撞木(しゅもく)のような頭の形をしています。この横に張り出た部分にはロレンチーニ器官と呼ばれる微弱な電気を感知する器官があります。

さまざまな種類の魚、甲殻類、頭足類を捕食します。また、小形のサメやエイも捕食の対象になります。特徴的な頭部で海底付近のエイのいる場所を探して掘り出し、そこからエイを砂から追い出した後に、頭部をエイに打ち付けて弱らせ、更にエイを海底に頭部で押さえ込む格好にしてから捕食します。

性質はやや荒く、日本近海のサメの中でもかなり警戒されている種です。繁殖形態は胎生で、胎仔は子宮内で卵黄の栄養分を使いながら大きくなります。


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■アブラツノザメ(板鰓亜綱・ツノザメ目・ツノザメ科)

アブラツノザメ(油角鮫)は、ツノザメ目ツノザメ科に属するサメです。南北太平洋・大西洋の温帯や、寒帯域の大陸棚付近に分布します。回遊魚であり、サメ類の中で最も分布海域が広く、個体数も多く、食用に大量に漁獲されています。

平均的な全長70~100センチメートルです。最大で全長160センチメートル、体重9.0キログラムに達します。体形は細長い流線形で、二基の背鰭前縁に弱い毒棘を備えます。

深海の底部や北方海域の浅い海の沖合に生息し、底生生物(ベントス)や魚類、甲殻類や軟体動物などを主食にしています。

生殖形態は非胎盤形成型の胎生です。妊娠期間は18~22カ月で、知られている脊椎動物の中で最長です。


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■カスザメ(板鰓亜綱・カスザメ目・カスザメ科)

カスザメ(糟鮫)は、カスザメ目カスザメ科に属するサメです。日本近海からフィリピン周辺海域にかけての温暖な海に生息します。

全長2.0~2.5メートル。体形は、上下に著しく扁平です。大きな胸鰭が横に張り出し、二基の背鰭は小さく後方にまとまっています。ほとんどエイのような格好をしていますが、鰓裂が側面に開いていることから、サメの仲間であることが分かります。

底生性で、沿岸域から大陸棚までの海底で生活します。平たい体を生かして海底の砂に潜りこみ、獲物を待ち伏せます。口が他のサメと異なり前面に開くので、砂に潜ったまま頭上を通る獲物を捕らえることができます。口は大きく開き、獲物を海水ごと吸引して丸呑みにします。歯は鋭く尖り、くわえた獲物を逃がしません。

本来は夜行性なので、夜になると餌を求めて活発に動き回ります。餌は、魚や甲殻類、軟体類などです。生殖形態は卵胎生です。


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■ノコギリザメ(板鰓亜綱・ノコギリザメ目・ノコギリザメ科)

ノコギリザメ(鋸鮫)とは、ノコギリザメ目ノコギリザメ科に属する、ノコギリ状の吻をもつサメの総称です。南アフリカからオーストラリアの沿岸海域、また日本近海にも生息します。

大きくなると全長170センチメートルに達します。体形は縦に扁平で、底生生活に適応し、あまり速く泳ぐことはできません。砂泥質の海底を好み、夜活発に活動します。

長く伸びた吻は扁平で、両側に棘のような歯が多数並びます。歯は長いものと短いものが交互に並ぶのが普通です。この凶器を振り回すことで餌生物に傷を負わせて気絶させたり、切り裂いたりします。主な餌となるのは、小魚やイカ、甲殻類などです。

また、面積の広い吻の下側には生物電気をキャッチする小さな孔(ロレンチーニ器官)が多数空いており、砂の中にいるエビやカニなどを見つけて掘り起こして食べます。吻には二本の肉質のヒゲが生えており、捕食行動に関連していると考えられています。

生殖形態は胎生で、子宮内の仔魚の吻は柔らかい膜に覆われ、母体を保護します。


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■ホンシビレエイ(板鰓亜綱・シビレエイ目・ヤマトシビレエイ科)

ホンシビレエイ(本痺れ鱏)は、シビレエイ目・ヤマトシビレエイ科のエイです。地中海や、ビスケー湾からアンゴラまでの東大西洋に分布します。

成長すると、全長60センチメートルになります。円形の胸鰭と、二基の背鰭がある厚い尾と、大きな尾鰭を持っています。背中に、通常は五個の、目立つ青の斑点があります。攻撃および防御のために、200ボルトまでの強力な電撃を発生できます。

底生性で、沿岸の浅瀬の軟質の基底層で見られます。単独で活動し、夜行性です。待ち伏せによる捕食を行い、主に硬骨魚や甲殻類を餌とします。

ホンシビレエイの電撃は人にとって、痛みを与えますが、危険性は低いとされます。古代ギリシアおよびローマ人は、ホンシビレエイの電撃を医療に利用しました。

生殖形態は非胎盤形成型の胎生です。成長中の胎仔は、母親の出す子宮乳によって栄養を与えられます。


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■ノコギリエイ(板鰓亜綱・ノコギリエイ目・ノコギリエイ科)

ノコギリエイ(鋸鱏)とは、ノコギリエイ目ノコギリエイ科に属する、ノコギリ状の吻をもつエイの総称です。インド洋から太平洋の熱帯・亜熱帯海域に広く分布し、さらに河川などの淡水域にも生息します。

非常に大形になり、最大で全長7.0メートルに達する種もいます。最も小形の種でも全長1.5メートル程度になります。体は縦に扁平ですが、やや厚みがあります。頭部にノコギリ状の吻を持つという際立った特徴を有します。

底生性、夜行性で、昼間は海底にじっとしており、夜間活発に餌を探します。餌は主に甲殻類や小魚です。吻は、砂を掘り起こすためや、小魚を叩き殺すために使われます。捕食の際、吻を振り回して小魚を気絶させ、致命傷を負わせた後、ゆっくりと食事にとりかかります。

吻の下側にはロレンチーニ器官と呼ばれる電気受容器が多数存在しており、吻を金属探知機のように振りかざして、砂の中にいる餌生物を探り当てます。

生殖形態は卵胎生です。生まれる前の子どもの吻は、母親の体を傷つけないように柔らかな膜に包まれています。


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■シノノメサカタザメ (板鰓亜綱・ガンギエイ目・シノノメサカタザメ科)

シノノメサカタザメ(東雲坂田鮫)は、ガンギエイ目シノノメサカタザメ科に属するエイです。インド洋や西太平洋の熱帯から温帯海域に広く分布します。

最大で全長3.0メートル、体重135キログラムに達します。エイとサメの中間のような体形ですが、鰓裂が腹面にあることからエイの仲間であることが分かります。吻は扁平で丸く、両目の上と、目の後ろから背中にかけて鋸状の隆起があります。

沿岸性で、サンゴ礁や砂泥質の海底付近を好みます。砂に潜ったり海底で休んだりする姿はほとんど見られず、常に海底付近を活発に遊泳します。他の多くのエイ類とは異なり、発達した尾鰭を左右に振って推進力を得ます。

底生性の甲殻類や貝類、硬骨魚類を捕食します。繁殖形態は胎生です。


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■オニイトマキエイ(板鰓亜綱・トビエイ目・トビエイ科)

オニイトマキエイ(鬼糸巻鱏)は、トビエイ目トビエイ科に属する世界最大のエイです。一般に、マンタと呼ばれます。世界中の熱帯・亜熱帯海域、とくにサンゴ礁周辺に生息します。普段は外洋の表層を遊泳しますが、沿岸域でも見られます。

オニイトマキエイの大きさは、胸鰭の横幅(体盤幅)で表すのが慣例です。平均的な個体では体盤幅3.0~5.0メートルです。最大で体盤幅8.0メートル、体重3.0トンに達します。体形は他のイトマキエイ類と同じく扁平な菱形で、細長い尾を持ちます。

頭部先端の両側には、胸鰭由来の頭鰭(とうき)と呼ばれるヘラ状の特殊な鰭が一対あります。これは自由に伸ばしたり丸めたりでき、餌を取るのに役立つと考えられています。また、プランクトン食という摂餌形態に対応して、他のエイと異なり、口は頭の正面に開きます。

熱帯の海のごく表層を遊泳し、泳ぎながらプランクトンを食べます。泳ぐときは大きな胸鰭を上下に羽ばたくように動かし、比較的ゆっくりと進みます。しかし餌となるプランクトンの集団を見つけたときは、大きな口を開けて速いスピードで、何度も宙返りするように上下方向に旋回を行います。特異な行動として、ときおり海面からジャンプすることが知られています。

繁殖形態は卵胎生で、一度に一匹ないし二匹の子どもを産みます。子どもは産まれたときすでに大きく、体盤幅1.0~1.2メートル、体重50キログラム前後になっています。


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