太陽神スーリヤ


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■太陽神スーリヤ

スーリヤは、インド神話における太陽神です。七頭の馬が曳く戦車に乗って、天空を翔ります。七頭の馬は、虹の七色もしくは七つのチャクラの象徴とされます。

スーリヤは、二本の腕を有し、両手にハスを持つ姿で描かれます。また、四本の腕を有し、蓮、円盤、法螺貝、杖を持つ姿で描かれることもあります。

ヒンドゥー教において、ヴィシュヌ派やシヴァ派の人々は、スーリヤをヴィシュヌ神もしくはシヴァ神の姿の一つとします。すなわち、ヴィシュヌ派の人々は太陽を「スーリヤ・ナーラーヤナ」と呼び、シヴァ派の人々はスーリヤをシヴァ神の八つの形態「アシュタムルティ」の一つとします。


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■誕生

スーリヤの誕生については、聖仙カシャパと女神アディティとの息子(アーディティヤ神群の一柱)とも、天空神ディヤウスの息子とも、雷神インドラの息子ともされます。また、原初の巨人プルシャの目から生まれたとも言われます。

スーリヤは太陽神のために全身から高熱を発しており、生まれた時に母親のアディティに放り出されたとされます。


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■神妃と子供たち

スーリヤと妃サンジュニヤーとの間には、ヴァイヴァスヴァタ・マヌ(七番目のマヌ、現在のマヌ)と、双子の兄ヤマ(冥界神)および妹ヤミーが生まれます。

サンジュニヤーも、スーリヤの母アディティと同様、スーリヤが発する激しい熱に耐えられなくなります。サンジュニヤーは自分の影からチャーヤーと呼ばれる女性を創り出し、自分がいない間、スーリヤの妻として振舞うように教え込みます。

チャーヤーはスーリヤの二人の息子、サーヴァルナ・マヌ(八番目のマヌ、次代のマヌ)およびシャニ(土星)と、二人の息女、タプティおよびヴィシュティの母となります。

サンジュニヤーは、スーリヤの許に戻った後、アシュヴィン双神(神聖な馭者で、神々の医者)として知られる双子と、末の息子レヴァンタを生みます。


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■猿王スグリーヴァ

叙事詩『ラーマーヤナ』においてスーリヤは、スグリーヴァの父として言及されます。スグリーヴァは、猿王リクシャラージャの妃がスーリヤとの間に生んだ子で、猿王ヴァーリンの弟です。

スグリーヴァは、兄のヴァーリンによって王国を追われますが、ラーマの援助を受けて王国を取り戻します。以来、スグリーヴァは猿族を率いてラーマとラクシュマナに味方し、ラークシャサ(羅刹)の王ラーヴァナを打倒するために尽力します。

図は、ブルックリン美術館所蔵のインド絵画『シーター捜索についてスグリーヴァと協議するラーマとラクシュマナ』です。


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■王妃クンティー

叙事詩『マハーバーラタ』においてスーリヤは、クル王パーンドゥの妃クンティーの若い頃の過ちにより、英雄カルナの父となります。

クンティーは若い頃、聖仙ドゥルヴァーサから、任意の神を呼び出して、その子を産むマントラを授かります。マントラの力を疑ったクンティーは、試しにスーリヤを呼び出しますが、実際にスーリヤが現れると、怖くなってスーリヤに戻るように願います。

しかし、スーリヤは、戻る前にマントラを実現する義務を負っていました。クンティーは仕方なく、子が父と同じ輝く鎧を身に着けるという条件で、スーリヤの子カルナを生みます。未婚での出産の発覚を恐れたクンティーは、生まれたばかりのカルナを箱に入れて川に流します。

その後、クンティーはクル王パーンドゥの妃となります。王は呪いのために女性に近づくことができなかったので、クンティーは再び神々を呼び出して、王のために子供を生むことになります。こうして、ダルマ神からユディシュティラ、風神ヴァーユからビーマ、雷神インドラから大英雄アルジュナが誕生します。


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■英雄カルナ

太陽神スーリヤの息子として生まれ、母のクンティーによって川に流されたカルナは、馭者アディラタに拾われ、養母ラーダーによって育てられます。

成長したカルナは、クルクシェートラの戦いにおける中心人物の一人となり、雷神インドラの息子で同母弟である大英雄アジュルナと対決します。

二人は激戦を繰り広げますが、カルナの戦車の片方の車輪が大地に陥没し、戦う術を失ったカルナの首を、アルジュナの矢が切り落とします。死後、カルナは昇天し、スーリヤと一体化したとされます。

カルナの最期と類似した筋書きがスーリヤにも見られます。カルナの父であるスーリヤとアルジュナの父であるインドラが戦ったとき、インドラはスーリヤの戦車の片方の車輪を不能にすることによって勝利したとされます。

図は、フィラデルフィア美術館所蔵のインド絵画『カルナと対決するアジャルナと馭者クリシュナ』です。左側の戦車にはアジュルナがクリシュナを馭者として着座し、右側の戦車にはカルナが着座しています。


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■モデラーのスーリヤ寺院

インド北西部のグジャラート州モデラーにある、ヒンドゥー教の太陽神スーリヤに捧げられた寺院です。

ソランキ王朝のビームデーヴ一世によって西暦1026年に建設されました。ソランキ王朝は自らを太陽神の子孫と考えていました。寺院は、昼夜平分時(春分・秋分)の最初の太陽光線がスーリヤの像にあたるように設計されています。


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■コナーラクのスーリヤ寺院

インド南東部のオリッサ州コナーラクにある、ヒンドゥー教の太陽神スーリヤに捧げられた寺院です。ユネスコの世界遺産に登録されています。

建設されたのは、十三世紀の後期東ガンガ王朝時代です。ナラシンハデーヴァ一世が王子の頃から建設を始め、完成までに二十年近くを要したとされます。

スーリヤ寺院を有名にしているのは、壁面を彩るヒンドゥー彫刻です。また、基壇には七頭の馬が曳く戦車に乗るという太陽神スーリヤをモチーフとして高さ三メートルの車輪が彫られ、その数は十二対(二十四基)におよびます。


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■アーディティヤ神群との関係

太陽神スーリヤは、イラン・インドの神話共有時代に遡る太古のアスラ族アーディティヤ神群と密接な関係を持っています。

アーディティヤ神群とは、女神アディティの息子で、太陽の諸属性を体現した神々とされます。ヴァルナを首領、ミトラを次席として、八神ないし十二神で構成されます。

スーリヤ自身がアーディティヤ神群の一柱とされることもありますが、むしろ、スーリヤはこれらの神々の太陽神としての属性を複合した神格と考えられているようです。

ヴェーダにおいてスーリヤは「ミトラ、ヴァルナ、アグニの目」として頻繁に言及されます。これと際立った類似性を示すのは、ゾロアスター教の経典です。そこでは太陽が「アフラ・マズダーの目」と表現されます。

現代のサンスクリット語では「アーディティヤ」が単数形で「スーリヤ(太陽)」の同意語として使用されます。


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