芥川(伊勢物語)


伊勢物語・芥川・系譜

●はじめに

藤原冬嗣の娘の順子が仁明天皇に入内して文徳天皇を生み、藤原良房の娘の明子が文徳天皇に入内して清和天皇を生み、藤原長良の娘の高子が清和天皇に入内して陽成天皇を生みます。こうして藤原氏は、朝廷内で絶大な権勢を振るいます。

高子が入内する以前、従姉妹の明子のもとに仕えていた時、高子に言い寄り続けていた在原業平が、ついに高子を盗み出します。これを察した高子の兄の藤原基経と藤原国経は、密かに高子を取り返します。業平は、消えた高子が鬼に食われたと嘆きます。

以下に伊勢物語第六段「芥川」の本文を参照します。図は、東京国立博物館所蔵「異本伊勢物語絵巻(模本)」です。


異本伊勢物語絵巻(東京国立博物館)

●芥川(伊勢物語第六段)

むかし、男(在原業平)ありけり。女(藤原高子)の、え得(う)まじかりけるを、年を経てよばひわたりけるを、辛うじて盗み出でて、いと暗きに来けり。芥川といふ河を率(ゐ)て行きければ、草の上に置きたりける露を、「かれは何ぞ」となん男に問ひける。


異本伊勢物語絵巻(東京国立博物館)

行く先多く、夜も更けにければ、鬼ある所とも知らで、神さへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ、あばらなる蔵に、女をば奥に押し入れて、男、弓・胡籙(やなぐひ)を負ひて、戸口に居り、・・・


異本伊勢物語絵巻(東京国立博物館)

・・・はや夜も明けなむと思ひつつゐたりけるに、鬼はや一口に食ひてけり。「あなや」と言ひけれど、神鳴る騒ぎに、え聞かざりけり。やうやう夜も明けゆくに、みれば、率て来(こ)し女もなし。足ずりをして泣けどもかひなし。

白玉か/何ぞと人の/問ひしとき/露と答へて/消えなましものを

これは、二条の后(藤原高子、藤原長良の娘、清和天皇に入内、陽成天皇の母)の、いとこの女御(藤原明子、長良の弟の藤原良房の娘、文徳天皇に入内、清和天皇の母)の御もとに、仕うまつるやうにて、ゐ給へけるを、かたちのいとめでたくおはしければ、盗みて負ひて出でたりけるを、御兄人堀河の大臣(藤原基経、長良の三男、良房の養嗣子となり摂政関白太政大臣に至る)、太郎国経の大納言(藤原国経、長良の長男)、まだ下郎にて、内裏へ参り給ふに、いみじう泣く人あるを聞きつけて、とどめて取り返し給うてけり。それを、かく鬼とはいふなりけり。まだいと若うて、后のただにおはしましける時とや。


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